「夫婦が管理組合の役員に就任」これって特に問題ないのか?と言う疑問を検証

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サラ管ブログのはじめに

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こんにちは!サラリーマン・マンション管理士ブログの「サラ管」です。

先ずは簡単な自己紹介です。

私はサラリーマンの傍らで「マンション管理士」としてのスキルアップを日々心掛けてるアラフィフおやじの「サラ管」です。

好きな言葉は「継続は力なり」。サラ管ブログを通じて、皆様の人生において私の人生経験が少しでも役立てればと思い、記事を書き記したいと思います。

それでは本題に入っていきたいと思います。

 

「夫婦が管理組合の役員に就任」これって特に問題ないのか?と言う疑問を検証

最終更新日 令和5年8月2日

 

先日、ある管理組合から相談を受け、話を聞いていくと・・・ふと気づいた事がありました。

 

今回はその相談内容からの気付きではなく、理事会役員の構成にかかわることでした。

 

実は、そのマンションの理事会役員には○○〇号室の一室を共有する夫婦が就かれていました。

 

あれっ?夫婦で理事会の役員になれるのかな?

 

役員の構成としてイメージするとき、各部屋の区分所有者がそれぞれ役員として就任することが考えられます。

また、定期総会の議決権を考えた場合には議決権行使者を1名選任するとするのが一般的なので、

 

果たして理事の役員に夫婦それぞれが就任しても問題はないのだろうか?

 

と疑問が生じたのが始まりでした。

 

 

結論から考えますと、

 

管理規約に別段の定めがない場合は、理事会役員に夫婦が就任すること自体は問題無いと考えられます。

 

なぜなら、区分所有法に定めがないからです。

 

しかし、これには「利益相反」という大きな問題があるので注意が必要です。

 

それでは、詳細を解説したいと思います!

 

総会の議決権と理事会の議決権

 

総会の議決権

○○〇号室の一室を例え夫婦で共有していた場合でも総会の議決権は1つしかありません

 

そのため、総会には夫婦二人の議決権は認められず、どちらか一方を議決権行使者として管理組合に届け出る必要があります。

 

従いまして、総会において夫婦両名が決議に参加することはできません。

以下、根拠条文になります。

【区分所有法】
第38条(議決権) 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合(各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合によるによる)。

 

【標準管理規約】
第46条(議決権) 
2 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。

 

理事会の議決権

夫婦で理事に就任できないというような定めは、区分所有法や標準管理規約を確認する限り特にないと考えられます。

従いまして、夫婦両名が区分所有者(共有)である以上は夫婦ともに管理組合の理事に就任できると考えられ、理事会の議決権をそれぞれ有していると考えられます。

 

区分所有法
第25条(選任及び解任)区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することが
できる
第26条1・2・4項(権限)管理者は、共用部分や建物の敷地及び附属施設を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2.管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。共用部分の損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても区分所有者を代理する。
4.管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることが
できる。
第43条(事務の報告)管理者は、集会を招集する権利を持ち(34条1項)、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

 

標準管理規約

第51条(理事会)理事会は、理事をもって構成する。

2 理事会の議長は、理事長が務める。

第52条(招集)理事会は、理事長が招集する。

2 理事が○分の1以上の理事の同意を得て理事会の招集を請求した場合には、理事長は速やかに理事会を招集しなければならない。

3 理事会の招集手続については、第43条(建替え決議を会議の目的とする場合の第1項及び第4項から第7項までを除く。)の規定を準用する。 ただし、理事会において別段の定めをすることができる。

第53条(理事会の会議及び議事)理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことがで きず、その議事は出席理事の過半数で決する。

第54条(議決事項)理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる 事項を決議する。

一 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案

二 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案

三 長期修繕計画の作成又は変更に関する案

四 その他の総会提出議案

五 第17条に定める承認又は不承認

六 第58条第3項に定める承認又は不承認

七 第60条第3項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴  訟その他法的措置の追行

八 第67条に定める勧告又は指示等

九 総会から付託された事項

第55条(専門委員会の設置)理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置 し、特定の課題を調査又は検討させることができる。 2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。

決議事項を総会に上程しても大丈夫?利益相反の恐れも

マンションで発生した事項は、まず理事会で議論されます。そしてそこで承認された事項は

総会において決議されます。

 

しかし、現状の総会では「委任状」出席が多数を占めることも考えられ、理事会で決議された議案が総会で決議される場合がほとんどです。

 

すなわち、理事会決議事項の重要性は非常に高いということになります

 

そのため、理事会に夫婦が就任している場合に利益相反になることが考えられます

 

例えば、小規模マンションにおいて理事会メンバーが3名の場合を例にして考えてみましょう。

マンションの保存行為に当たる工事に対し意見が分かれたとしましょう。

・理事A(夫)、理事B(妻)が賛成

・理事Cは反対

この場合、夫婦の意見が承認される事になります。

 

この工事発注に透明性を求めた場合にそれが担保できるのか?

 

出来るわけありません。利益相反の恐れがあります!

 

監事がいるから大丈夫なのでは?

 

という意見があると思いますが、はたして「監事」業務が機能している管理組合はどの程度あるのでしょうか?

 

監事の多くは一般の区分所有者で、監事業務に精通している組合員はほとんどではないでしょうか。

その為、管理会社から総会前に出された監査関連書類に目を通して総会に報告するのが一般的な業務であることを考えた場合、利益相反を阻止することはできないと考えられます。

 

ではどうすればよいのか・・・。

 

明確に規約事項とする必要性あり

管理規約に規約事項として明確に定めることをお勧めします。

 

標準管理規約を採用しているマンションが多いことを考えると、新たに管理規約において定める必要があります。

 

規約を変更する方法

規約事項とするには総会における「特別決議」が必要になります。

 

一般的には理事会で検討し総会に上程、そして決議されます。

 

上記のように夫婦で理事会が牛耳られている場合には別な方法があります。ハードルは高いですが、賛同者を募って総会を開催する方法です。

区分所有法第34条(集会の招集)3・4・5項 
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

4 前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。
5 管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

 

 

どのような規約条文とすればよいのか?

例えば、

第○○条(役員の選任)

管理組合の役員には総会における議決権を有するものを選任する

あるいは、

第○○条(理事会の議決権)

住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなし、議決権を行使する者1名を選任する

 

など。

 

議決権を有すものはすなわち、住戸1戸に1人になるので、夫婦で共有していても役員に就任できるのは議決権を有するどちらか一方になります。

標準管理規約第46条(議決権)2項及び3項 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。

 

役員のなり手がいない場合は・・・

建物の高経年化や高齢化と共に、役員のなり手が減り、どうしても組合員だけでは運営が困難な場合はどうすれば・・・?

外部専門家役員(マンション管理士等の専門家が管理組合の役員に就任)を活用する方法もありますが、費用が高額になります(月額10万円~。外部専門家が役員になる事は、つまり、非常に責任が重くなるという事になる為に費用は高額になります)。

費用を抑えるなら、「外部専門家顧問+専門委員会」の活用が考えられます。これなら月4万円~と費用は抑えられます(顧問の場合、管理組合に対しての助言・支援・指導になるのでリスクが低い為)。

例えば、マンションの管理運営に積極的な居住者等(同居の親族や賃借人等)で専門委員会を形成し、議論を重ねたのちに理事会へ上程し決議する。この場合、マンション管理士等専門家がサポートするので、理事会の負担は大いに軽減されます。但し、この場合は専門家の選任は慎重に行う必要はあります。

(以下、2023.2.4追記)

但し、どうしても役員のなり手がいないなどの問題がある場合、区分所有者以外の役員就任も検討せざるを得ません。

この場合は、マンション管理士等を顧問として採用、あるいは役員として就任してもらう等して、管理組合を支援、あるいは監督してもらうなどの方策を検討してみても良いかもしれません。

 

 

 

 

まとめ

・一般的なマンション管理組合においては、部屋を共有する夫婦で役員に就任することは可能だと考えられます。これは、多くのマンションが標準管理規約をもとに定められており、その規約には「共有者の役員就任の明確な定め」がないからです。

・夫婦での役員就任は利益相反の可能性も否定できないため、夫婦で就任が出来ないよう、規約や細則において明確に役員選任基準を定めることをお勧めします。

・但し、どうしても役員のなり手がいないなどの問題がある場合、区分所有者以外の役員就任も検討せざるを得ません。この場合は、マンション管理士等を顧問として採用、あるいは役員として就任してもらう等して、管理組合を支援、あるいは監督してもらうなどの方策を検討してみても良いかもしれません。

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